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鯛枝朗様より頂き物SS(後編2話) 

こんばんは。
TOP絵変えました。
2日前に変えたばかりだったのですが、カラー絵を練習中なので☆
2日間TOPだった絵は、関連した素敵な作品を頂戴しましたのでそちらと併せて再度アップしますv
掲載許可、ありがとうございます~!(ぎゅー!)

こちらの記事には鯛枝朗様より頂きました堂郁オムニバス小説の後編2話、
『ミッションポッシブル』『望むところですっ』を掲載させて頂きます。
一つ一つの作品は読みきりでもお楽しみ頂けますが、前編2話も是非vv

今回の後編2話は堂上さん祭りですよー☆
悶々とする教官が大好物な方にはたまらないかと!もちろん私もッ(笑)
READ MOREからどうぞv



【ミッションポッシブル】


ちゃぽん… ぱしゃ… ちゃぽん…
熱い湯が肌に心地いい。
多少酒は呑んだが、自分の酒量からすると風呂に入って回る程ではない。
慣れないことで緊張していたのか、いくぶん背中や肩も凝っていたようだ。
首を左右に振ると、ぱきぱきと音がした。
こういう場合、激しく揉むと逆効果であることは解っているので、肩まで湯に浸かりながら、反対の手を乗せて、じんわりと押すように揉み解す。
湯の中に、自分の凝りが溶けだしていくように、肩が少しずつ楽になっていく。
「ぅああぁっ…」
その気持ちよさに、ついおっさん臭い呻き声が洩れてしまった。
しかし、ここは風呂。しかも寮のような大浴場で他の誰かが入っているということもない、実家の風呂だ。
誰に聞かれることもないのだから、憚る必要もない。
もう一度肩をじんわりと押し、ひときわ大きな声でおっさん臭く呻き声をあげた。


「兄貴―。バスタオルとパ…、あ、バスタオルここ置いとくねー」
がらりと脱衣所の扉が開いて、妹の静香が入ってきた。
「ばっ! おまえ、仮にも男が風呂に入ってるんだぞ! 気安く入って来るんじゃないっ」
「いいじゃん別に、兄妹なんだし。それにお風呂の扉開けたわけでもないじゃん」
何なら、お背中流しましょうか? とまでふざけて言いやがる。
こいつは、本当に開けっぴろげというか恥じらいが無いというか、大胆にも程がある。
堂上としては、呻いた後間髪入れずに入ってきた静香に、聞かれてはいまいかと、内心ひやひやしたが、何も突っ込まないところを見ると、うまい具合に聞こえはしなかったのだろう。
万一、聞かれていたならば、こいつのことだ、大笑いするに決まっている。
「用が済んだんなら、さっさとあっち行け!」
弱みを握られると後が厄介なので、追い払いたい一心で、怒鳴り気味に言う。
「―――てかさー、兄貴、替えのパンツはー? 持って来て無いでしょう?」
「別にいらんっ。俺はどうせ笠原を送って寮に戻るから、帰ってから履き替えればいい」
「えー、だめだよー。お風呂に入ったら綺麗なのに履き替えなきゃ。
いくつか家にも置いてあるんでしょ。あたし、取ってきてあげるから、それまで上がらずに待っててよ」
ふるちんで出てきて探されて、見たくもないもの見せられるの嫌だしー。 とげらげら笑う。
「あほかっ貴様っ! そんな格好で出ていくわけないだろーがっ」
そんなこと平気で言いやがって!本当にこいつは、妙齢の女なんだろうか? 堂上は静香の彼氏が気の毒になった。
とにかく、取って来るから待っててよ! と言い残して、静香は脱衣所を出て行った。
やけに親切なことが気になったが、ここは風呂、自分の格好を考えると、追いかけて問い詰めたいところを我慢した。


嵐が過ぎ去り、風呂にはまた静寂が戻る。
ふぅ… と大きくため息をついてから湯船を出て、洗い場で髪と身体を手早く洗う。
いつもなら、このまま上がるが、待っててと言い残した静香がまだ戻ってこない。
下手にこのまま出て、先程のように遠慮なく脱衣所の扉を開けられでもしたら堪らない。
後々、何を言われるか解ったもんじゃない。
別に見られて困ることがあるわけでもないが、そこはあいつのことだ、尾ひれどころか角やら牙やらまでついたとんでもない化け物にして、いかにももっともらしく言いふらし、俺を困らせて楽しむだろう。
仕方なく、堂上はもう一度、少しぬるくなった湯に浸かることにした。
パンツの入っている、自分の部屋の箪笥の引き出しの場所を言えば良かった。
というより、端から自分で持って来れば良かった。
しかし、風呂に入ろうとしたとき、自分は慌てていたのだ。
だからバスタオルもパンツも忘れて、手ぶらのまま来てしまった。
脱いでから思い出したが、また着直して取りに戻るのも面倒だったので、脱衣所のドアから顔だけ出して、バスタオルを持って来てくれるよう頼んだ。

いや、慌てたというより、動揺したというほうが正しいか…
郁の無自覚なしどけない姿と、ダダ漏れで呟く言葉に…

『―――一緒に撮った写真とか欲しいかもー…』
あほか。そんなもん、こっちだって欲しいに決まってるだろが。
しかし、写真は苦手だ。これまで上手く笑えた試しが無い。
あぁ、だけど、郁の写真は欲しいな。
今日家族にばれた、練習だと誤魔化して携帯で撮った唯一のものしか持ってないことだし。

『―――お揃いで指輪してるのもちょっと羨ましいけど周囲にバレバレの環境だし別に今さら敢えてしるしがいるとも思えないし…』
女ってのは、やっぱり小牧のようなフェミニストに憧れるもんなのか。
しかし、結婚指輪ならともかく、恋人同士でお揃いの指輪なんて、俺には死んでも無理だ。
だが、お前は俺との間に、今さらしるしなんて必要無いと言ってくれるのか。
あんまり可愛いこと言うな、バカ…

『―――でも一番はもっとキスとかしたいかなー…』
何言ってんだお前は! 俺だってそれを一番思っていないはずがなかろーがっ!
でなきゃ、あんなに小牧に笑われながら、恥を忍んで相談するわきゃないだろーがっ。
小牧の奴、手塚にまでばらしやがって、上官としてのメンツ丸潰れだ。
まぁ、それを郁が知っているはずも無いのだから、仕方ないかもしれんが…
大体、誘おうとしたときに、何で冬なのにアイスなんて持っていたんだ。
溶けたりしない、煎餅やら饅頭やらを持っていればよかったものを…
きっかけさえ掴めれば、お前と俺の一番の望みはすぐにでも叶うってもんだ。
後は、タイミングの問題だけだ。
そう、きっかけとタイミングだ…

そうだ、明日は初詣をしてからバーゲンを覗いてショッピングでもする予定だったが、先に電器屋の初売りに行ってデジカメを買ってやろう。
そうすれば、少なくとも郁の望みのひとつは、そして俺の望みも、すぐに叶うのだから。

それにしても、静香は遅い。
俺の部屋に取りに行って、郁と話し込んでるんじゃなかろうか。
余計なことを吹き込まなければいいが…


堂上が、いい加減待つのを諦めて上がろうとした時、再び脱衣所の扉が唐突に開いた。
「兄貴― お待たせー。どこだか解んなかったから、お母さんが買っててくれた新しいの持ってきたげたからー」
「だからお前はっ!いきなり開けんなっつてんだろっ!」
「えー。見られて困るもんでもあるのー?」
キスマークとかぁ? 風呂の扉のすりガラス越しにまたもげらげら笑う静香のシルエットに向かって、堂上は湯をぶちまけた。
「あほかっ!バカなことばっかり言ってないで、さっさと行けっ」
きゃーきゃーと笑いながら、静香が脱衣所の扉を開ける気配がする。
そのまま出ていくのかと思いきや、堂上の恐れていたことを投げつけられた。
「あ、それと兄貴、あんまりおっさん臭く呻いたりすると、可愛い彼女に振られるよ」
「!!おまっ!」
まさかの不意打ちに、がらりと扉を開けた堂上だったが、静香はきゃははと笑いながら既に廊下を走り去っていた。

全く、油断も隙もあったもんじゃない… 
バスタオルで体を拭い、新品のパンツを履き、服を着終えた堂上が、最後に手にしたものは、携帯。
脱ぐ前に置いた時と、向きが違ったような気がしたが、特に気に留めることなく、ポケットにしまい込んだ。


静香…それは堂上家に於いて、ある意味最強の女性。
彼女の手に掛れば、堂上家でインポッシブルなミッションは存在しない。


END




【望むところですっ】



「―――教官… どうですか…」

「ああ…」

自分のそれとは違って、郁の細くて長い指が頬を瞼を額を、滑るように動く。

「―――どんな感じか、ちゃんと言ってくれなきゃ駄目ですよ」

「…あぁ、気持ちいい…な」

堂上の答えに、くすりと笑う郁の声が熱を帯びている。

目つぶっててくださいね、と言われている自分には見えるはずもないが、郁が瞳を潤ませ、妖艶な微笑みを浮かべていることが手に取るように解った。

郁の指は執拗に、まるで堂上を焦らすかのごとく、肌の上を滑らかに動き続ける。

触れられている頬に全神経が集中しているにも拘らず、堂上は次第に腰のあたりに甘い痺れにも似た快感が溜まり始めるのを感じていた。

そんな堂上の変化が解るのか、郁はクスクスと笑いながら、更に煽るように言葉を紡ぐ。

「―――どんな風に? どんな風に気持ちいいの?教官…」

郁の指は一瞬たりとも止まらず、喉元から耳朶の辺りまで、ゆっくりと蠢きながら這い上る。

これ以上はもう耐えられない。

「!!郁っ!」

堂上は閉じていた瞼を開き、郁の唇とその先を奪おうとした。―――





―――目を開くと、すぐ前にいるはずの郁は何処にもおらず、深夜の暗闇の中、ただ自室の味気無い天井が目に入るだけ。

「くそっ!」

まただ。 またこの夢を見た。

堂上は、心と火照った身体を鎮めようと、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、一気に半分ほど飲んだ。

この夢を見る度、言い様の無い苛立ちと喪失感に苛まれる。



理由もよく解らないまま、すれ違いの日々を過ごした後、聞き様によってはかなり際どい、郁の「触られたいんです」宣言により、元の状態に戻ったふたりだった。

その日は『催涙弾テロ事件』で、館内に取り残された子供を助けようと反射的に飛び込んだ郁を追って、催涙ガスの中を長時間走り回った。

その後『肌の手入れ』とやらを郁に施されたことが、こんな夢を見るようになった発端である事は解りきっている。

郁にしてみれば、単に堂上の肌を心配しての事だったのだが、してもらった身にとっては、有難いを通り越して酷く我慢を強いられるものになった。

おまけにその翌日、館内をたまたま独りで移動中、階段の上から柴崎に声を掛けられた。

あぁ、そういえば昔もこういう風に声を掛けられて、冗談めいた告白を受けたな。 と思い出したとき、誰をも魅了してやまない微笑みを浮かべながら、昨日ヤリ逃げされたんですって? と矢じりに爆弾を取り付けた矢を放たれた。

「ばっ!人聞きの悪い言い方するんじゃないっ!」

怒鳴るように窘めたが、柴崎は全く意に介さず、コロコロと笑いながら

「王子様に触れられて、お姫様の呪縛も漸く解けたみたいですよ~」と語尾にハートマークでも付きそうな話し方で、二の矢を放って消えた。

勿論、実際には消えたわけではなく、固まって動けなくなった堂上をその場に残して、階上へ去って行ったのだが…



あれから半月以上経つ。官舎裏でのキスも復活したし、公休日デートも3度ほどした。

こんな夢を週に何度も見るようになってしまったことは、郁だけではなく、誰にも悟られてはいないはずだ。そしてこれからも、決してあってはならない。

まだ何処にも触れさせてもらえない好きな女に、あんなことされて平気でいられる男がいたらお目にかかりたいもんだ。

あいつの無自覚さは重々承知しているつもりだが、偶に俺の理性の限界を試されているんじゃあ無いかと思うようなことをしてくれる。

近ごろに至っては、理性のレギュラーメンバーどころか二軍の補欠まで総動員しても押し負けそうになることもしばしばだ。

直接自分の頬に触れる郁の指の感触は、今もありありと思い出される。

勿論現実では、夢の中のようなことを郁が言ったはずもなく、あれは自分の単なる妄想であり、願望であるのだが。

俺もそろそろ我慢の限界だな… と堂上は自嘲気味に呟いた。



しかし目覚めたからといって、一度火のついた身体は容易に治まってくれる気配はない。

このまま、自身を見て見ぬ振りしてやり過ごすことも出来なくはないが、そうすると朝から一日中不快な感覚に身体が支配されることも知っている。

下手すると苛立ちさえ伴うその不快さは、健全な男にとって、至極当たり前のことだ。

一日を何とか乗り切ったとしても、また明日も同じ夢を見てしまうに違いない。

それを防ぐために出来ることは、ただ一つの方法しか無い。

男としてそうすることは当たり前だと、頭では理解している。

だが心に問いかけると、こんな夢を見て、ましてや気持ちと自身を鎮めるための行為を初心なあいつが知ったら、軽蔑されるのではないかと思ってしまう。

確かにこれまでも、公園や官舎裏でキスをして帰った後、どうにもこうにも寝付けなくて、自己処理をしたことはある。

郁の堪えきれなくて洩れ出る声や、腰砕けの状態で頬を上気させながら見つめてくる潤んだ瞳、僅かに差し込む灯りの中でキスの名残の濡れて艶めかしく光る唇…

俺を煽っているとしか思えないような諸々の無自覚な言動が、脳裏に焼き付いてどうしようもなくなるからだ。

そういう現実に目や耳にしたものではなく、欲望と願望のみで構成された夢を見て、3日と空けずに熱を放出してやらねばならない自分が情けなくもある。

男の生理現象とは、いかに厄介な物か。

掠めた罪悪感を頭の隅に追いやって、堂上はテーブルの上にあるティッシュボックスに手を伸ばした。





◇◆◇





「堂上教官、お待たせしました。日報できあがりました。」

ん。と言って受け取り、内容に目を通す。

郁も入隊して間もなく丸4年。まだまだ他の奴らより時間が掛るとはいえ、内容に不備があることはほぼ無くなった。

「郁、今晩は何か用事があるか? 無ければ一緒に晩飯食いに出掛けないか?」

確認印をついた日報を郁に返しながら、堂上が言った。

突然のお誘いに、郁はパッと表情を輝かせ満面の笑顔で返答する。

堂上は、ある筈のない尻尾がちぎれんばかりに振られているような錯覚を覚えた。

「いえ、何もないです。 普通の日に堂上教官と一緒に夕飯食べられるなんて、すっごく嬉しいです。」

元より明々後日の公休日にはデートの約束をしている。

デートの日には一緒に夕飯まで過ごすのだが、普段残業の多い堂上は、それ以外の日に郁と食事に出掛けられることは、殆ど無かった。

出掛けるなら一旦寮に戻って着替えてからにしたいと、可愛いことを郁は言う。

30分後に寮の玄関で待ち合わせて出掛けることになった。

自慢の足を駆使して寮までダッシュしそうな様子なので、走るなよ、と声を掛けた。

郁は、わかってます! と答えたが、事務室のドアを閉めた途端、パタパタと足音を響かせて駆けて行った。

こんなに郁が喜ぶのなら、できるだけ残業を減らす努力をして、もっと頻繁に誘ってやろうと考えながら、堂上も帰り支度を始めた。





あまり遠出できる程の時間でもなかったので、駅の向こう側にある創作居酒屋へ行くことにした。

以前にもふたりで来たことがあるその店は、居酒屋といっても所謂チェーン店ではなく、こぢんまりとして雰囲気も良く、学生より大人の客が多い店だ。

チェーン店より少し値は張るが、手の込んだ一品料理だけでなくご飯ものやデザートもとても美味しく、殆ど呑めない郁にとって大変嬉しい店だった。

また堂上にとっても、酒の種類が豊富で、銘酒と呼ばれるものから大衆向けの酒まで多種揃えてあるところが有難い。

久しぶりに行ってみようということでやって来たのだが、目的地に着いたふたりの前には、無情にもシャッターと『定休日』の札。

「―――うーわー… なんでー、今日に限って休みなのー」

「定休日なら仕方ないな。どうする? 電車で移動するか?」

ここが休みならば、あそこか… どうせならゆっくり美味しい物を食べたいので、堂上は他を思い浮かべるが、生憎その店はこの近くではない。

「無理ですー。あたし、もうペコペコでお腹と背中がくっついて、死にそうですー。」

来る途中、あれとこれは絶対頼みましょうね。 などと、注文したい料理について話していた郁は、既に腹ペコ限界だ。

余りに情けなそうな郁の表情に、口に拳を当てくつくつ笑い「この近くで、直ぐに食べられる店はファミレスしかないぞ」と堂上が提案する。

「それー!それがいいです。堂上教官、ファミレスにしましょう!」

郁はそう言うなり、つい今しがた、死にそうだと言っていたのはどこのどいつだ?と言いたくなるような速さで走り出し、早く早く! と手を振って呼ぶ。

走るな!転ぶぞ! と一声掛けてから、堂上も小走りに後を追った。





結局、近くのファミレスになったこともあり、食事が終わっても門限までにはまだ充分に時間があった。

腹ごなしを兼ねて、公休日デートの帰りによく立ち寄る公園を散歩してから帰ることにした。

3月半ばを幾分過ぎていたが、流石に夜になるとまだまだ冷え込む日も多い。

堂上は、郁の手を取り自分のコートのポケットに一緒に突っ込んで歩いた。

初めて、こうしたのはいつの事だったか。

あれは去年の冬、まだふたりが付き合い始める半年以上前、当麻先生の変装用の品を買いに出かけた時だ。

理由をいくつも付けなければならなかったあの頃のことを思うと、今こうして当たり前のように手を繋げることが、大層幸せに思う。





たいして大きくも無いその公園には桜の木が多く植えられており、近辺ではそれなりのお花見スポットでもある。

もう少しすればそれらの桜も一斉に花開き、夜も多くの人で賑うが、今はまだ人気は疎らだ。

自販機で、ホットコーヒーと郁の為にミルクティを買い、桜の木が良く見えるベンチに自然と二人並んで腰かけた。

まだ咲いてはいないその蕾は大きく膨らんでおり、間もなく息を飲むほど美しく可憐な姿を見せてくれるだろう。



「ねぇ教官、今日はあのお店残念でしたけど絶対今度また行きましょうね。」

郁は余程心残りなのか、つい先程、ここまでお腹いっぱいです。と細い喉元を指差して話していたのと、同じ口から出る言葉とは思えないことを言う。

「おまえ、腹いっぱいだったんじゃないのか」

「だってぇー、食べようと思ってたのが食べられなかったら悲しいじゃないですかー。

お腹いっぱいだろうがなんだろうが、美味しいものは美味しいし、いつ思い出しても嬉しいんですー。」

「わかったわかった。じゃぁ、明々後日のデートの時に行こうな。」

ぷぅと頬を膨らませる郁が可愛くて、髪をくしゃりとかき混ぜてやりながら肩口へ抱き寄せた。

どちらからというわけでもなく、ふたりの唇が引き寄せられるように重なる。

浅く―――深く―――優しく―――激しく―――

貪るように何度も何度もキスをして、漸く離れた堂上の目に映るのは、頬を桜色に染める郁のはにかんだ笑顔。

もう一度キスしようとして顔を近づけた時、郁が、あ! と小さく叫び徐に堂上のこめかみのあたりに指を這わした。

「ここ、やっと綺麗に治りましたね。かぶれた跡がカサカサになってて、気になってたんです。」

催涙ガスを浴びた後の手入れを郁にしてもらった一度きりで、それ以降何もしなかったせいか、堂上は左のこめかみあたりにほんの少しだけかぶれを残した。

その跡を気にしていたのであろう、堂上のこめかみに触れながら、治って良かった。と微笑む郁と目が合い、堂上の中で何かが弾け飛んだ。

勢いよく抱き寄せ、ギュッと抱きしめたまま耳元で囁くように告げた。

「―――郁、あの店に行くの、明後日の晩にしないか?」

え? と驚いて顔を上げようとする郁を、更に力を込めて抱きしめる。

今見つめられたら、告げる勇気を持ち続けられるか解らない。

「―――その後… 一緒に朝を迎えたい…」

リオのカーニバル並みに踊り狂う心臓を落ち着かせるため深呼吸を3度してから身体を離し、真っ赤になってしまった郁の顔を覗き込んだ。

「ダメか?」

郁は、赤いまま俯いて小さくかぶりを振りながら、ダメ…じゃないです… と消え入るような声で答える。

「本当にいいのか? 朝を迎えるというのは、つまり…そういう関係を持つということなんだぞ。意味解って言ってんのか?」

流石にこの状況で言葉をはき違えるとは考え難いが、いつも予想の斜め上にジャンプする郁のことだ、まさかとは思うが、念のため確認するに超したことは無い。

いざ当日、「そういう意味だとは思ってませんでした」など言われでもしたら、一生立ち直れない気がする。

「の、望むところですっ」

がばっと顔を上げた郁は、しっかりと堂上の目を捉え、拳でガッツポーズをして力強く宣言する。

この場に不釣り合いな言葉とポーズが、余りにも可愛くていじらしくて、「お前この状況で女がその返答はないだろ。」とつい笑いが込み上げた。



もう一度キスをしようとして顔を近づける堂上の視界の隅に、気の早い桜が一輪、凛と咲き誇っているのが捉えられた。





漸くふたりの合意と予定が取れた。

郁のパニックと、堂上のむつごろうさん化まで、あと2日…


END




『望むところですっ』の
「―――教官… どうですか…」 で既にご飯3杯いける!(ハアハア)←早ッ
最後の郁ちゃんのガッツポーズも可愛くてきゅんきゅんしました。
何てカワイイのこの娘ってば!!天然小悪魔だよもうッ(笑)

「まだ咲いてはいないその蕾は大きく膨らんでおり、間もなく息を飲むほど美しく可憐な姿を見せてくれるだろう。」
っていう一文、これ郁ちゃんのカラダの隠喩!?エロいーーーー!(ぐっ)
(すみませんすみません)

鯛枝朗さん、掲載許可をありがとうございました!
感想は私宛にお送り頂きましたらお伝えさせて頂きますv
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Posted on 2012/02/29 Wed. 21:21 [edit]

category: 素敵頂き物♪

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